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フルマラソンサブ3.5ランナーはウルトラウォーキングを完歩できるのか
2021年6月12日(土)、13日(日)に開催された第5回富士山一周ウルトラフリーウォーキングに参加してきた。この大会は富士山一周125kmを32時間以内で完歩するというもの。私はこれまでウルトラウォーキングに参加したことはなく、125kmもの長い距離を歩いたり走ったりしたこともない。そのため、距離への不安はあったが、日頃ランニングで足を鍛えているという自負から完歩は間違いないだろうと高をくくっていた。
マラソンとは違いスタートまではリラックスして過ごす
フルマラソンは体調が悪いと結果が出ない。そのため私はフルマラソンの大会1週間前から禁酒をしてコンディションを整え、当日もスタート4時間前(たいていは朝4時や5時)に朝食をすませるようにしている。記録更新へのプレッシャーからナーバスにもなる。しかし、ウルトラウォーキングは距離こそ長いが歩く大会である。多少調子が悪くても足は動くだろうということで、前日から熱海、富士宮を観光して楽しみ、当日もスタート1時間前にたっぷりの朝食をとるなどゆったりと過ごした。
▲長丁場になるので朝食はたっぷりと。
25時間での完歩を目標に序盤は順調に歩を進める
そんなわけで完歩できるか不安はあったものの、そこまでナーバスになることなくスタートを迎えた。スタート地点は富士宮市のセブンイレブン富士朝日町店。ここから時計回りに富士山を一周してまた同じセブンイレブンに戻る123km(急きょ距離変更があった)が今回のコースである。ちなみに個人的な目標は25時間以内での完歩。かなりアップダウンのあるコースなので焦らず平均12:00/kmペース(時速5km)歩き続けることを目指した。幸い天気は薄曇りでそこまで暑くもなく、序盤は順調に歩みを進めることができた。
50kmをすぎると足が疲れてくる
今回の富士山一周ウルトラフリーウォーキングの参加者は約300名。この約300名が3グループに分かれて時間差でスタートしたので、1グループは約100名。少ないがそれでもある程度はグループが形成されるのだろうと思っていたが、集団は早々にバラけて序盤から単独で歩みを進めることになった。1人で黙々と歩いていると気づかないうちにペースは上がり、予定の12:00/kmペースを上回る9:30/km〜10:00/kmペースで歩いていた。29km地点の第1エイドの道の駅朝霧高原へは当初15:23到着予定であったが、1時間以上も早い14:10に到着。その後も予定よりも早いペースで歩き続け、20:11到着予定であった53km地点の第3エイドのファミリーマート河口湖フォレストモール前店へは18:08と2時間以上も早く到着した。ただ、ずっとアスファルト上を歩き続けた影響からか、この第3エイドあたりから足裏に痛みが出始めていた。
▲第3エイドでいただいた吉田のうどん。疲れた体にコシのあるうどんはツラかったw
真っ暗な夜はより一層孤独感が増す
第3エイドを出発し、次のエイドであるセブンイレブン山中湖畔店へ向かう。第3エイド周辺の河口湖町は非常に栄えており、ずっと1人で歩いてきた寂しさが少し紛れた。ただ、だんだんと外が暗くなるにつれ、再び街も閑散としてくる。日が暮れて完全に真っ暗になった頃には、人通りも車通りもほとんどない峠道に入った。もちろん外灯もなく、ヘッドランプを点けなければ目の前の道すらも見えない状況。真っ暗闇の中をたった1人で歩くだけでも不安だが、道が合っているかどうかの不安にも襲われる。そんな状態で2時間以上歩いて、20:35頃にようやく第4エイドのセブンイレブン山中湖畔店に着いたときの安心感は相当なものであった。
▲車が通らなければ真っ暗で何も見えない。この道を歩くのは正直怖かった。
疲労もピークになり幻覚が見え始める
全体のほぼ中間点、66km地点の第4エイドのセブンイレブン山中湖畔店にも予定より2時間早く到着できたので、目標の25時間よりもだいぶ早いタイムでゴールできるかもしれないという思いが一瞬頭をよぎった。ただし、このあたりから足もツラくなり始め、1kmのペースも10分以上かかるようになってきた。その上、第5エイドのセブンイレブン御殿場板妻西店へと向かう道はまたもや真っ暗闇の峠道。そんな道をたった1人で歩くのは精神的にもツラい。そんな状況だからか、草木やその影が犬に見えたり、人間に見えたりと幻覚が見えるようになってきた。風に揺れる工事の垂れ幕がマントをなびかせている人に見えたときは、思わず「うわっ」と声をあげてしまった。
延々と続くアップダウンに足が終わる
91km地点、第5エイドのセブンイレブン御殿場板妻西店についたのは1:10頃。この頃はハムストリングス(太ももの裏)に痛みが出ていた。さらに内臓疲労もあり、エイドで提供された海苔巻きといなり寿司がなかなか喉を通らなかった。そうして少し休憩している間に筋肉が固まり、再び歩きだすのもツラくなる。ということでここでレッドブルを投入し、翼を授かることにした。そして最後のエイドである105km地点のこどもの国を目指し、再び真っ暗闇の道へ進む。しかし、ここからの道がツラかった。これまでもアップダウンはあったが、こどもの国へと続く道はまさに急登。すでに限界を迎えているハムストリングスをさらに痛めつけるような道に心が折れそうになった。ただ、このあたりで参加者の男性2名と合流し、会話をしながら進んだことでいくらか気が紛れた。
痛みに耐えて歩き続ける
最後のエイドであるこどもの国C駐車場に着いたのは4:00頃。ようやく外が明るくなってきて少しほっとした気持ちになるが、体はすでに限界。エイドですすめられたはるさめスープを飲む気も起きない。膝裏の筋肉が切れたのか立ったり座ったりする際に激痛を感じるようにもなった。あまり休むと体が動かなくなりそうだったので寝転びたい気持ちを振り切って、なんとか出発。しかしここへきて、足の痛みだけでなく尻擦れの痛みにも襲われる。皮膚擦れ防止のクリームは塗っていたが、途中で塗り直さなかったのが災いした。ただ、バックパックを下ろしてクリームを探す気力も起きず、そのまま進むことにした。
なんとか完歩するもその後は歩けず
こどもの国を出発してから外も明るくなり、真夜中のような寂しさはなくなった。ただ、真っ暗な夜道は視界からの情報が入らないので歩くことに集中することができる一方、明るくなると、これから進む長く続く道が見えるのが精神的にキツい。景色も変わらないので進んでいる感じもしない。体はもちろんツラいのだが、確実にゴールに近づいているという実感が得られないことの方がツラい。こんな感じで頭の中はネガティブな感情で溢れる。ただ、100km以上歩いてリタイアするという選択肢もないので、それでも一歩ずつ前進む。そんなわけで体の痛みやネガティブな感情を我慢しながら、ひたすらに歩き続け、8:23:48にゴールにたどり着くことができた。スタートしてからのタイムは22時間48分48秒。目標の25時間よりも早くゴールすることができた。ただ、無理して歩いて体のダメージはヒドく、ゴールしてからしばらくは歩くことすらできなかった。
▲こども国より先はずっとこんな道が続く。景色が変わらないのが本当にキツかった。
初めてのウルトラウォーキングを終えて
ということでフルマラソンサブ3.5ランナーは富士山一周ウルトラフリーウォーキングを完歩することはできた。ただ、歩きとはいえ距離、時間が長いので体へのダメージは大きい。私はハムストリングスの肉離れを起こし、ゴール後丸2日間はまともに歩くことすらできなかった。最初からペースを抑えていればいくらかダメージは軽減されたかもしれないが、その分時間が長くなるのでトータルので疲労度合いは実は変わらないかもしれない。これはまた次にウルトラウォーキングに挑戦する機会があれば検証したいと思うが、今の時点ではまた挑戦しようという気持ちはまったくない(笑)。
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