【書評】『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得』(タナカカツキ著、講談社)

書評

 

最近、サウナが流行っているなと思う。テレビではサウナ―というサウナ好きな人たちがサウナの楽しみ方を紹介していたり、サウナを題材にした漫画やテレビドラマがあったりと、ひと昔まえでは考えられないくらいサウナのことを見聞きする機会が増えた。今はコロナウイルスのせいで気軽に出かけることはできないが、終息したらサウナに行ってみたい。そう思い、『サ道 心と体が「ととのう」サウナの心得』(タナカカツキ著、講談社)を読んでみた。読後、サウナに行ってみたい気持ちがより一層高まったのでここで紹介することにしたい。

 

正直なところ、私はサウナが苦手である。たまにスーパー銭湯やビジネスホテルに行った際に、せっかくだからと思って、サウナに入ることはある。サウナ室の時計が1週(12分)するまで入っていようと思うが、呼吸をするのも苦しいほどの暑さに耐えられず、大抵はすぐに出てしまう。その後の水風呂もあまりの冷たさに一度も肩まで浸かれたためしがない。一体サウナのどこが良いのだろうかと思うのだが、サウナ―の方々が口をそろえて言う「ととのう」という感覚を一度でもいいから味わってみたいとも思う。これがサウナに再挑戦してみたい一番の理由である。

 

本書はサウナ大使であるタナカカツキ氏によるサウナ体験記である。意外なことに、著者はもともとサウナが嫌いだったという。サウナが苦手だと感じている多くの人がそう思っているように、著者もサウナや水風呂に対して「罰ゲーム」や「拷問」というイメージを抱いていた。そんなサウナ嫌いだった著者が、スポーツジムの会費の元を取るべく、ジムに併設されていたサウナにたまたま入ったことがきっかけでサウナにハマっていく。そんな様子が本書ではとても面白く描かれている。

 

私もそうだが、サウナのあとの水風呂に入れないという人は多いと思う。本書によるとサウナの正しい入り方は、サウナと水風呂のセットを何度か繰り返すことなのだが、サウナ初心者にとって水風呂に入ることはとてもハードルが高い。サウナで体は温まっているはずなのに、水風呂に足をつけただけでも飛び上がるくらい冷たく感じてしまう。私も何度か水風呂にトライしたことはあるが、膝くらいまでがいいところで、肩まで浸かるなんてとても考えられなかった。

 

我慢して水風呂に入った先には何が待っているのだろうか。そのことのついて著者は次のように述べている。

そのうち・・・ ・・・、少し慣れてきた。熱いお風呂に入ったときとおんなじように最初はピリピリするけど徐々に慣れてくる。

水の温度は18度、凍えるほどの冷たさではない。

さっきまでサウナの熱に包まれていた身体は、ものすごい熱を持っているから、じっとしていれば、うす~い温度の膜、「温度の羽衣」ができあがる。

肌に冷たい水が直接触れなくなり楽になる。じっとしていれば、さらに羽衣の生地は厚手になってゆく。

火照った身体と水風呂の温度差により肌の表面に「温度の羽衣」ができ、水の冷たさを感じなくなるという。これもぜひ体感してみたいではないか。

 

そうして何度かサウナのあとの水風呂を繰り返していると、突然その感覚が現れる。

気持ちがいい。とっても気持ちがいい。目を閉じる。

呼吸が整う。どんどん瞑想状態になっていき、そうして、精神の真っ平らな境地、スーパー穏やかな感覚がやってきた!

この感覚をさらに意識的に取り込んでゆく。もっと来い!もっと来い!

全身の力を緩める。リラ~~ックス!じ~~~~ん・・・ ・・・。

キターー!キタキタキタキタキタキタ快感!快感や~!

本書には「ととのう」という表現は出てこないが、おそらくこのリラックス状態のことを言うのであろう。そしてこのリラックス状態には水風呂を経ないとたどり着けない。サウナでリラックスする(ととのう)には水風呂は必須なのである。

 

著者がもともとサウナ嫌いだったことは先にも書いたが、今では日本サウナ・スパ協会公認のサウナ大使として、サウナや水風呂のすばらしさを広める活動をしているそうだ。私のようなサウナのことをよく知らない人にとっては、本書『サ道』を読んでもよいし、同タイトルの漫画やドラマもあるので興味があったら見てみてほしい。サウナの正しい入り方、その効能を知れば、きっとサウナに行きたくなるはずである。ちなみに本書でも漫画でもサウナ体験がとても面白く描かれているので、タナカカツキ氏とは何者なのだろうと思って経歴を調べてみた。すると漫画家であるということのほかに、「コップのフチ子」企画原案とあった。その瞬間、「なるほどな」と思った。

 

本書ではサウナ(と水風呂)に入るということは血行を強制的に促進させる行為であるとしている。サウナに入ると血管が拡張し、心拍数が上がる。そのあとに水風呂に入ると、血管は収縮する。こうして血管の拡張、収縮を繰り返すことで心臓と血管のポンプ機能が鍛えられ、冬場でも風邪をひきにくくなるなどメリットがある。ただし、個人的には健康によいというメリット(それはそれでありがたいが)よりも、著者の次の言葉の方がサウナに行きたいという気持ちにさせられる。

「なぜ、サウナに行くのですが?」と問えば、「それは気分がよくなるから」と今はそんな感じで思う。

ということでコロナウイルスの1日も早い終息を願うばかりである。

 

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