【書評】『インプットした情報を「お金」に変える黄金のアウトプット術』(成毛眞著、ポプラ社)

書評

 

今回紹介する本は成毛眞氏の『インプットした情報を「お金」に変える黄金のアウトプット術』(ポプラ社)である。本書は日本マイクロソフト社長を経験し、現在は書評サイト「HONZ」の代表である成毛眞氏がこれからの時代を生き抜くためのアウトプット術を語ったものである。情報をいかに収集するかということではなく情報をいかに発信していくかということに焦点を当てているのが本書のユニークな点である。

 

これからの時代を生き抜くということは自分以外のその他大勢の人たちから抜きん出ないといけない。他者との差別化を図るためには、テレビ、新聞、インターネット、書籍など色んな媒体からより多くの情報を収集しなければいけないと思っている人は多いと思う。そんな人こそ本書の読者として最も適している。本書は、他社との差別化に必要なのはインプットではなくアウトプットであるということに気づかせてくれる。

 

著者がアウトプットを推奨しているのは、まずはアウトプットをしている人が少ないということと、アウトプットをすることで自分では気づいていない才能に他者が気づいてくれる可能性があるからである。例えば実は面白い文章を書く才能を持っていたとか、実はわかりやすいプレゼンをする技術があったとかは、実際にアウトプットをしないことには気づいてもらえない。自分は~するのが苦手だと思って、アウトプットをすることを躊躇してしまうと他者から自分の隠れた才能に気づいてもらうこともできなくなるのである。

 

それでは実際に何をどうアウトプットすればよいのかというと、書くアウトプットがいちばんラクだというのが著者の意見である。ほとんどの人は他者を感動させる写真の撮り方や、人を楽しませる動画作成術などというものは学んできていないだろうが、文章の書き方だけは学校教育の中で学んできているはずである。中でも一番社会人が書くべき文章、求められる文章として「紹介文」を挙げているが、これは書評サイト「HONZ」を運営している著者ならではと言える。

 

ところで本書のタイトルは『インプットした情報を「お金」に変える黄金のアウトプット術』である。アウトプットがお金になるということをイメージできない人もいるかもしれないが、たとえば書評であればアフィリエイト収入(本の紹介料)を得ることができる。Amazonであれば、本の紹介料率は3%であり、1,000円の本が1冊売れれば30円が紹介者に入るという仕組みになっている。これを多いと思うか少ないと思うかは判断が分かれるところだと思うが、個人的には悪くないと思う。ちなみにKindle本ならば紹介料率は8%へと上がる。

 

ただしお金を得ることがアウトプットの最終目標ではないことは注意しておきたい。このことについて本書では次のように述べられている。

今の時代、情報収集、勉強をして、知識、教養を溜め込んで満足しているようでは、もうダメだ。得た情報をどう発信して、自分の血肉とするのか、価値あるものに変えていくのか、もっとわかりやすく言えば、「お金」に変えるのかを意識せよ。それを強烈に意識してより良質なアウトプットができれば、センスが磨かれ、アイデアが生まれ、人脈が広がり、評価が上がり、必ず成果がついてくることだろう。そして、さらなる情報が自分のもとに集まってくる。

中略

これからの時代は得た知識や情報を、カタチにできる者だけが生き残っていく。

アウトプットをするのは、他者との差別化を図り、これからの時代を生き抜いていくためなのである。

 

そんなアウトプットをひたすらに推す著者成毛眞氏とはどんな人なのかというと、先にも書いたが日本マイクロソフトの社長を経て、現在は書評サイト「HONZ」を運営している。書評というアウトプットを行いながら、成毛氏は自身で本も書いておりまさにアウトプットのプロフェッショナルと言える。私は成毛氏の本は好きでよく読んでいるが、その内容は他者とは違う独自性があり読んでいてとても面白い。これは著者が自身を天邪鬼と公言しているがゆえなのだろう。

 

話はそれたが、他者と差別化をするにはいかに色んな情報をインプットするかにかかっていると思っている人は多いかもしれない。しかし、情報をインプットしただけでは他者との差別化は図れない。インプットした情報を自分なり咀嚼して、受け手に役立つような形でアウトプットすることで初めて他者との差別化が図れるのである。情報を得ることばかりに夢中になっている人はぜひ本書を読んでみてほしい。これからの時代を生き抜くためのヒントが得られるはずである。

 

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