【書評】『世界を見てきた投資のプロが新入社員にこっそり教えている驚くほどシンプルで一生使える投資の極意』(加藤航介著、東洋経済新報社)

書評

 

投資と資産運用について基礎から学べる1冊

本書は資産運用会社で20年働いてきた著者が、そのキャリアの中で感じて学んだことを綴った1冊である。内容は投資全般と幅広いが、著者が新入社員に教えるという設定になっており、投資についてまったくわからないという人にも理解しやすくなっている。日本では、投資は怖いものであり、自分には関係ないものと感じている人は多いと思う。しかし、本書を読めば、投資=怖いものというイメージは払拭され、さらに投資は個人だけでなく、会社や社会全体が豊かになるために必要なものであるということがわかるだろう。

 

投資とは資産運用のことだけではない

投資というとまずは資産運用のことを思い浮かべる人は多いと思うが、実はそれだけではない。人的資産(自分自身の価値)を上げるために努力することも立派な投資である。これはいわゆる自己投資と呼ばれるものだが、自分自身へ投資する自己投資は金融資産への投資よりも効率がよいので、金融資産への投資を考える前にまずは自己投資を考えた方が良い。株やFXなどに安易に手を出すよりも、まずは仕事で稼ぐ能力を高める努力する方が確実にリターンを得ることができる。

 

投資の基本は人的資産と金融資産をトータルに考える

個人的な話になるが、私は15年以上株式投資を行っており、色々と授業料を払った結果(笑)、今はインデックス投資をメインに行っている。つみたてNISAで全世界株式インデックスを、特定口座では日本株と米国株インデックスを定額で積み立てている。これらのパフォーマンスも上々で、投資についてはもうこれ以上知識は必要ないと思っていた。しかし、本書は投資に対する新たな視点を与えてくれた。それは金融資産への投資を考えるときには、人的資産では補えない分野や、自分の仕事では手が届かない場所にお金を振り向けるということである。つまり、自分とお金という2つの資産をトータルで考えることが重要なのである。例えば、日系企業に勤めている人は人的資産は日本100%なので、金融資産に投資をする際は日本以外にするというようにバランスを取るのである。

 

資産運用のアドバイスには、次の2つがとても重要なんだ。

①自分の人的資産が「日本資産なのか」「海外資産なのか」を考えること

②「世界の中で日本の立ち位置」を考えること

これを踏まえて、とくに日本人に必要なのは、金融資産で人的資産のかたよりを修正して、よりよいバランスをつくるっていう発想だ。

 

ポートフォリオのバランスの考え方

 

資産運用でポートフォリオのバランスを考えるときは、次の2つに気を配ること。

①日本資産と海外資産のバランス

②安定資産と成長資産のバランス

 

ということで、ポートフォリオのバランスは、人的資産と金融資産をトータルに考えたうえで、国内と海外、安定資産と成長資産は半分ずつを目標にする。世界経済の中で6%の規模を占め、雇用が安定している日本において、ほとんどの人は大きな人的資産を有している。そのうえで、金融資産を預貯金だけにしていると、日本資産、安定資産に大きくかたよることになりバランスがよくない。そのような人は海外資産や成長資産を増やすということを考えないといけない。

 

自分の生活基盤と資産運用先は一緒にしない

本書を読んで、実は人的資産と金融資産のバランスを取るという考えを小さな規模では実践していたことに気づいた。人的資産と金融資産のバランスを取るとはつまるところ、自分の生活基盤がある場所と資産運用先は一緒にしないということである。私は勤めている会社で自社株会を勧められることがあるが、ずっと断っている。これはもし会社が倒産したら、給与だけでなく自社株という資産も失うことになるからである。これを大きな視点で見れば、日本国内に住んでいて日本企業に勤めている人は、天災や国の破綻に備えて海外資産に投資をするということになる。自分の生活基盤が揺らぐような事態になっても、そこに影響されない金融資産があれば、そうした危機を乗り越えることができるのである。

 

投資について基本をしっかり理解したい人におすすめ

本書は投資について、基本的な考え方から実践の仕方まで丁寧に解説されているので、これから投資を始めたいと考えている人におすすめできる1冊となっている。若い世代からリタイア世代まで自分自身の立ち位置を考慮して投資先を検討するという本書の基本的な考え方を理解できれば、投資についてもう迷うことはないであろう。また、投資でうまく成果を上げることができないという人も、本書を読めば投資について正しい知識を改めて知るいいきっかけとなるだろう。

 

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