目次
タイトルは挑戦的ではあるが
『走る奴なんて馬鹿だと思ってた』とは、ランナーからするとなかなか挑戦的なタイトルである。しかし本書はランニングやランナーを馬鹿にしているわけではなく、そんな風に思っていた著者がランニングにハマり、そしてフルマラソンに挑戦するまでを描いたエッセイである。走る奴なんて馬鹿だと思っていたけど、ランニングをやってみたらハマってしまった、という内容である。
著者がランニングに熱中していく様子が面白い
本書は運動とは無縁だった著者がなぜランニングを始めたのか、そしてどのようにしてランニングにハマっていったのかということが赤裸々に描かれている。どうすればランニングが上達するか、速く走れるかという実用的なアドバイスは一切書かれていないが、著者のエピソードを読むことでランニングを楽しみながら継続させるコツを学ぶことができる。
長く続けるには無理をしないことも大事
著者は10代から30年以上運動とはまったく縁のない生活を送っていた。しかし45歳のときに体調不良がピークに達し、医者から「太陽を浴びて運動してください」と言われたことがきっかけでランニングを始める。最初は100メートルも走れずに挫折してしまうが、体調が一向によくならなかったため、著者は決意を新たにランニングを再開するのである。
決意と体力の相互関係はわからないが、辛くなる前にペースをゆるめ、きつくなったら無理せず歩きに切り替え、なんとか最初の一般道と交わるところまでを、2往復。
新しいことを始めると、つい頑張って無理をしてしまいがちだが、長く続けるにはこのように無理せず頑張りすぎないということは大事である。
ランニングを楽しみながら続けるコツ
そうして著者はランニングを続けていく中でだんだん長い距離を速く走れるようになることに喜びを感じていく。そしてウェアに凝ったり、ランニングアプリでランデータを確認したり、さらに新しいルートを開拓することにも楽しみを見出す。
もう、真夜中の居酒屋での恒例、「GPSの結果を肴に、チューハイが進むの会(一人で開催)」はますますの盛り上がりを見せる。ランアプリの地図に表示される、「今日の成果」。キロ数が延びることも喜びだが、新しい道を「制覇」した満足感たるや、店の売り上げにどれだけ貢献してるんだってくらい「お代わり」が進む。
そして、このくらい走れるようになった私には、新たなる、面白すぎる趣味ができたのだった。
それが「地図で距離測定」。梅雨時、「雨雲レーダー」ばかり見ていたと書いたが、今度はネットでルート探しに夢中になった。
走らない人にとっては理解できないかもしれないが、ランナーなら著者に共感する人は多いと思う。ちょっと走れるようになるとウェアに凝りだし、いつもより速く、そして長く走れたときはアプリでデータをチェックして満足感に浸る。また、新たなルートを探すべく地図アプリとにらめっこしているランナーもきっと多いはずであるが、こうした楽しみを見つけることはランニングを継続させるためにはものすごく大事なのである。
著者の松久淳とはどんな人物か
著者は体の不調がきっかけで45歳で始めたランニングにハマり、そしてフルマラソンを完走するまでになる。そんな著者はランニングを始める前、最後に運動らしい運動をしたのはなんと小学校4年生の少年野球だという。著者は作家なので、仕事で体を動かすこともほぼない。そんな著者は医者からの助言(忠告?)でランニングを始めるのだが、(1回は挫折しているが)これが継続できていることについて著者は自身のコンプリート癖、マニア癖によるものだとしている。健康のためにと始めたランニングにのめりこみ、フルマラソンを走れるまでになるのだから、著者のマニア癖は相当なレベルだということが伺える。
想定読者
本書はランニングが題材となっているので、現在ランニングをしている人は間違いなく楽しめるだろう。また、ランニングを始めたものの三日坊主で終わった人、続けられない人にとっても、楽しみながらランニングを続けるコツが本書から学べると思う。
最後に
コロナウイルスの影響でマラソン大会がことごとく中止となり、目標を見失っているランナー。走り始めたものの、なんだかんだで続かなかった三日坊主ランナー。本書はそのどちらにとっても、ランニングの楽しさを再発見できる1冊となっている。地図を見ながら新しいランニングルートを開拓したり、実際に走った記録をアプリで眺めたり、今だからこそ、著者のように純粋にランニング自体を楽しんでみるのもいいかもしれない。
コメント