【書評】『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』(井上はじめ著、新潮社)

書評

 

私が株式投資を始めてかれこれ17年。これまで何冊もの投資本を読み漁り、色んなことを実践し、成功や失敗を経験した。その結果、全世界株式への定額積立投資が一番であるとの結論に達し、もう投資について学ぶことはないと思っていた。しかし、たまたま読んだ『33歳で手取り22万円の僕が1億円を貯められた理由』(井上はじめ著、新潮社)はそんな私でも新しい発見があったので本記事で紹介することとしたい。なお、本書は投資経験があり、それなりに投資資金がある人向けではあるが、本書に書かれている投資についての考え方は初心者にとっても非常に参考となる内容となっている。

 

すぐに億万長者になれる方法はない

本書は33歳で手取り22万円以下のサラリーマンである著者が1億円を貯めるまでのストーリーとその具体的な方法について書かれたものである。タイトルにある1億円という金額だけ見ると、どんなすごい投資法が紹介されているのかと期待してしまうが、紹介されている投資法は王道とも言われる定額積立投資(と不動産投資)であり、著者が購入を勧めている金融商品も世界経済全体という至極まっとうなものである。著者はすぐに億万長者になれる方法はないとした上で、なぜ定額積立なのか、なぜ世界経済全体への投資なのかということも丁寧に説明されているのでとても納得感がある。また、一定の条件で利益を確定させるという著者独自の投資ルールは私のようなほったらかし投資家にとってはとても新鮮であった。

 

本書で紹介されている投資のルール

著者は今後30年間は世界経済は成長していくという前提で、世界経済全体へ積立投資をすることを推奨している。その上で、積立投資をするにあたっては下記の3つのルールを守ってほしいとしている。なお、本書では著者が推奨している具体的な金融商品名も記載されているので、気になる方は見て見て欲しい。

 

1 記帳ルール 運用成績(積立額とその時点の資産評価額)を記録する。

2 売却ルール 売却のタイミングは大きく2回。タイミングがきたらそれまで積立した分を全て売却する。

①基準価格が右肩上がりしている時期は「損益(%)」がプラス20%を超えた時

②基準価格が右肩下がりしている時期は絶対に売却せず、積立購入を継続し、その後「損益(%)」がプラス100%を超えた時(に売却を検討する)

3 売却後の積立ルール 売却して得たお金は、10年分に分けて毎月の積立額に上乗せする。

 

定額積立投資のメリットデメリット

私のように定額積立投資をしている人は、定期的な運用成績のチェックはしつつも、それ以外はほったらかしという人は多いと思う。定額積立投資は価格が下がった時には多くの数量を購入し、価格が上がった時には少ない数量を購入するため、平均購入単価を下げられるというメリットがある。そのため、基本的には価格の上げ下げを気にする必要がないので、精神的にも非常に楽な投資法である。その反面、売り時を判断するのが難しく、出口戦略を誤ると損をする可能性もあるというデメリットがある。

 

著者のルールは定額積立投資のデメリットを補える

本書で紹介されている売却ルールはそんな定額積立投資のデメリットを補えるものである。損益がプラス20%を超えたらすべて売却し、利益を確定させることで投資資金を増やすことができる。また、増えたお金を毎月の積立額に上乗せすることでそれまで以上にお金を増やすこともできる。もちろん売却すれば手数料や税金は発生するが、値動きによっては減ってしまうかもしれない含み益をそのままにしておくよりは、着実に利益を確定した方がよりお金を増やせたという実感がある分得策であると思う。

 

定額積立投資は長期間で考えるべきだが

個人的には本書で著者が紹介しているルールについては早速私も取り入れたいと思い、つみたてNISA以外で積み立てている投資信託で損益がプラス20%を超えているものについてはすべて売却した。ただし、その資金を10年分に分けて積み立てるとその間に浮いているお金がもったいない。もともと投資は余剰資金でやっているのにその大部分を寝かせておくのは機会損失になる。ということで私は5年分に分けて積み立てることにした。今後5年間で損益が20%を超えることがないという可能性もあるが、その際は給与から天引きしている預金を充てればいいと考えている。

 

本書はお金の大切さを再認識させてくれる1冊

本書は著者が1億円を貯めるまでのストーリーとその方法について書かれた本だが、お金の大切さについても教えてくれる1冊となっている。著者は27歳のときに交通事故に遭い、一時仕事ができなくなった。しかし著者にはその時点で2000万円以上の資金があったため、平常心でいることもできたし、ブログやデイトレードにもチャレンジできたと振り返っている。世の中にはお金がなくても幸せに暮らせるとか、お金に執着しないという考えもある。もちろんお金より大事なことはたくさんある。しかし、お金があれば人生の選択肢が増えるというのも事実である。将来への不安が軽減されたり、やりたいと思っていたことにもチャレンジできる。これから年末年始を迎えるにあたり、改めてお金について考えてみたい、来年に向けて自分の投資法を見直したいという方は本書を読んでみることをおすすめしたい。

 

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